オゾン物語 オゾンに対する染色堅ろう度試験

オゾンに対する染色堅ろう度試験

2008年1月17日に財団法人「日本衣料管理協会」の依頼を受けてオゾンに関する講演をしました。

「オゾンいろいろ」と言うタイトルで、実際いろいろな話を1時間半くらいでしました。その中で特に近年JIS規格が制定された「オゾンに関する堅ろう度試験」の話をしたので、それについて紹介します。

JIS規格の概要

2006年に「オゾンに対する染色堅ろう度試験方法」(JISL0890:2006)と言うJIS規格が制定されました。これは国際規格ISO105-G03をJIS規格として見直して制定されたものです。

このJIS規格は染色した繊維にオゾンを曝露し、染色の堅ろう度を判断するための試験方法を規定したものです。

低湿オゾン試験と高湿オゾン試験の2通りの試験条件が定められています。

低湿オゾン試験条件
  • 温度30±5℃
  • 湿度65%以下
  • オゾン濃度……4.5±0.5ppm
  • 試験時間……1サイクル6時間
高湿オゾン試験条件
  • 温度40±5℃
  • 湿度85±5%
  • オゾン濃度……4.5±0.5ppm
  • 試験時間……1サイクル4時間

上記のいずれを行うかは「要求される相対湿度条件により選定する」となっています。

JIS規格制定の趣旨とISO規格からの変更点

このような制定を行った趣旨を同JISの解説書は次のように述べています。

「大気中のオゾン環境の著しい変化に伴い、繊維にとってその影響が見過ごせなくなった。

「ISO規格に規定された標準染色布(サンプルとの褪色の比較のため用いられる標準的な染色布)がアレルギー性を持ち生産中止となった。

ISOではオゾン試験濃度が0.1~0.35ppmと低く、促進試験として不満足である。(試験時間がかかり過ぎる)

上記の趣旨に基づいて、JIS規格はISO規格から主に次の点が変更されています。

オゾン標準染色布の染料を無害なものから新たに選定した。

標準染色布を使用にないで、測色計を用いて等級を判断することも許容することとした。

低湿条件の試験と高湿条件の試験条件を明確にした。

特に試験時間の短縮のためにオゾン濃度を4.5±0.5ppmとISO規格の10倍以上に高めた。

試験装置……装置の系統構成

このJIS規格による装置の系統構成の一例です。

JISL0890:2006 試験装置・系統構成の一例

無制御で4.5PPM±0.5PPMに保持するのは通常困難ですので、この例ではオゾン濃度制御器を加えておきました。

オゾン濃度計は比較的安価な半導体式のセンサーもありますが、4.5PPM±0.5PPMの精度を出すことは困難と思われます。紫外線式濃度計が高精度です。ただし、高価でであるのが難点です。

また特に高湿オゾン試験を行う場合にはガスの除湿をしっかりしないと結露して誤差を生じるので注意する必要があります。

オゾン曝露試験装置の実例
カラー写真用フィルムの品質管理に使われているオゾン曝露試験装置(エコデザイン(株)製OX-5)

上の写真は、カラー写真用フィルムの品質管理に使われているオゾン曝露試験装置(エコデザイン(株)製OX-5)です。

曝露試験槽は温度及び湿度の調節か可能で、オゾン濃度は1~10pmの範囲で任意の値に±0.5ppmの精度でコントロール出来るものです。

ただし、上記の装置で使用されているオゾン発生器は無声放電式ですので、「オゾンに対する染色堅ろう度試験」に使用するためには、オゾン発生部を紫外線ランプ式に変える必要があります。