気相中のオゾン濃度測定法(オゾンガス濃度測定法)

原理

ヨウ化カリウム(KI)水溶液中にオゾンを吹き込むと、次式の反応により、ヨウ素が遊離します。

O3+2I-+H2O⇒I2+O2+2OH-

更にオゾンを吹き込み続けると遊離したヨウ素からKIOやKIO3などの酸化生成物が生成されますが、この溶液に酸を加えて酸性(pH≦4)にするとヨウ素は再び遊離します。

この際、遊離したヨウ素とオゾンの量はモル比で等量です。

ヨウ素が遊離した溶液をチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)で滴定すると、次式によりヨウ素が還元され、ヨウ素による着色が消えます。

I2+2S2O32-⇒2I-+S4O62-

完全にヨウ素の色が消えるまでに加えたチオ硫酸ナトリウムの量から、流通したオゾンの量を算出します。

オゾン(O3):ヨウ素(I2):チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)のモル比は1:1:2であり、0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液1mLが、2.4mgのオゾン量に相当します。

単位時間あたりにKI溶液に吹き込まれたオゾンの量を、オゾン含有ガス全体の流量で割ると、ガス中のオゾン濃度が求まります。

必要な物品(KI法オゾン分析セット)
  • 1. メスシリンダ(250ml)
  • 2. ヨウ化カリウム(KI)
  • 3. クエン酸
  • 4. ポリエチレンビン(250ml)×2個
  • 5. ピペット(5ml)×2個
  • 6. ビュレット(25ml目盛り)&ビュレット支持体1式
  • 7. チオ硫酸ナトリウム(0.1mol/L)
  • 8. でんぷん水溶液
  • 9. ビーカー&攪拌棒
1. メスシリンダ(250ml)

KI溶液を入れ、その中にオゾン含有ガスを吹き込むための容器。

2. ヨウ化カリウム(KI)

KI溶液を作るためのもの。

3. クエン酸

オゾンを吹き込んだKI溶液を酸性にするためのもの。

4. ポリエチレンビン(250ml)×2個

クエン酸、でんぷん溶液を入れて保存するために使用。

5. ピペット(5ml)×2個

クエン酸、でんぷん溶液を加える際に使用。

6. ビュレット(25ml目盛り)&ビュレット支持体1式

チオ硫酸ナトリウムでヨウ素を滴定するのに使用。

7. チオ硫酸ナトリウム(0.1mol/L)

ヨウ素滴定に使用。

8. でんぷん水溶液

「ヨウ素:でんぷん反応」で青色に着色することを利用し、ヨウ素が微量になってきたときに加えて滴定の精度を上げる。

9. ビーカー&攪拌棒

滴定時にビーカーに溶液を入れ、攪拌棒で攪拌しながら滴定を行う。

測定前の準備
  • 1. 10%クエン酸の作成
  • 2. でんぷん溶液の作成
1. 10%クエン酸の作成

エン酸水和物20gを、精製水180ccで溶かします。

作成したクエン酸をポリエチレンビンに移し、ラベルに内容物を明記します。

2. でんぷん溶液の作成

200mlの精製水に対して可溶性でんぷん1gを加えて加熱し、でんぷんを溶かします。

作成した溶液をポリエチレンビンに移し、ラベルに内容物を明記します。

測定

用途に応じて、実験しやすい系統を構成します。

オゾン濃度が測定できるための試験系統は、試験系へオゾンが導入出来ると同時に、次の条件を満たしている必要があります。

  • 1. 三方弁などにより、排気系(オゾン除去器やドラフト等)へ流路を切り替えられる。
  • 2. 流量が測定できる。
  • 3. 三方弁などにより、オゾン測定系(KI溶液)へ流路を切り替えられる。

また、オゾンは非常に反応性が高く、機器等を腐食させるため、接オゾンガス部の配管、弁、機器等の材料は全てオゾンと反応性の低いテフロン、ステンレス、ガラスなどを用いてください。

系統構成例

ご参考用として以下に代表的な系統構成例を挙げます。

  • 1. 放電管内が大気圧での運転
  • 2. 放電管内が高圧での運転
1. 放電管内が大気圧での運転

シンプルな構成です。

流量計・流量調節弁がオゾン発生器の上流に位置するため、耐オゾン性のものを使わなくても良いという利点があります。

(1)放電管内が大気圧での運転
2. 放電管内が高圧での運転

流量調節弁・流量計がオゾン発生器の下流に位置する構成です。

特に当社のオゾン発生器を用いた場合、放電管内を高圧(0.5~2kg/cm2程度)にした方が大気圧での運転に比べ、約1.5倍のオゾンを発生出来るため、より高濃度や高発生量が必要な場合、このような系統にする必要があります。

流量計は耐オゾン性のあるステンレス、ガラス、テフロンで作られたものを選定して下さい。

(2)放電管内が高圧での運転

この系統では、オゾン発生器起動中に流量を測った場合、気体がオゾン含有酸素として流量計を通るため、酸素で公正された流量計にわずかに誤差が生じます。

注意点

なお、上記1,2の系統は試験系が減圧、高圧の場合不向きです。

そのような条件での試験をご希望の場合はご相談下さい。

測定手順

系統については、上記までの記載を参考にしてください。

(1)

三方弁によりオゾン測定系(KI溶液)へ流路が切り替えられる系統を組みます。

(2)

ヨウ化カリウム(KI)を精製水約200mlに溶かし、2~5%の濃度のKI溶液を作成します。

作成したKI溶液を250mlメスシリンダへ移し、三方弁からのオゾン測定系への配管をメスシリンダ低部まで差し込みます

(2)メスシリンダ

メスシリンダは細く、倒れやすいため、気をつけてください。

PFAチューブをコンロ等であぶり、上図のような形に曲げると取り扱い易くなります。

(3)

流路を排気系にし、装置を起動します。

(4)

流路をオゾン測定系へ切り替えると同時にストップウォッチで時間を測り始めます。

オゾンガスが吹き込まれ、KI溶液はヨウ素を遊離し、黄色く着色します。

一定時間(濃度により30秒~5分間程度)経った後、流路を排気系へ戻します。

(5)

着色した溶液を300mlビーカーへ移し、クエン酸10%を5~10ml程度注入します。

するとヨウ素が完全に遊離し、強く赤色(濃度による)に着色します。

(6)

着色した溶液中に、攪拌棒で良く攪拌しながら(マグネチックスターラーがある場合は用いると便利です)、0.1mol/lチオ硫酸ナトリウムをビュレットから滴下します。

すると、遊離したヨウ素が還元され、溶液の色が徐々に薄くなっていきます。

液の色が非常に薄い黄色になったところで、でんぷん溶液を加えると、「ヨウ素:でんぷん反応」によりわずかなヨウ素でも強く青色に着色し、測定の感度が向上します。

ヨウ素の色が完全に消えた時点で滴定終了です。

滴下されたチオ硫酸ナトリウムの量から、吹き込まれたオゾンの総量が算出できます。

オゾン量・濃度の計算

発生したオゾンガスを全て測定系に送るような系統の場合、次式により一時間あたりの発生オゾン量Y(g/hr)が求まります。

Y=(2.4*a/1000)*(60/t)=0.144*a/t

a……0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム滴定量(ml)

t……オゾンを吹き込んだ時間(min)

測定ガス中のオゾン濃度C(g/m3)は次式より求めます。

C=2.4*a/(t*Q)

Q……ガス流量(l/min)

標準状態(0℃,1気圧)におけるオゾン濃度CN(g/Nm3)は次式より求めます。

CN=d*(273+θ)/273

θ……流量計通過時のガス温度

重量比によるオゾン濃度CN'(w%)は次式より求めます。

CN'=CN*{(22.4/1000)/32}*100=0.07*CN

▲このページの上部へ