オゾン物語 プロローグ

プロローグ

オゾンについての話をしていきたいと思います。

気楽に読んでいただきながらオゾンについて理解を深めていただければと思います。

何よりもオゾンがとても面白い物質であることを認識していただければ幸いです。

「私はオゾン発生器を作る仕事をしてます」と話しますと、「オゾン層のためにオゾンをつくる装置ですか」などと問われます。

「いやいやそーではなくてー」とオゾンにはこれこれこういう効用があってそのためにオゾンを発生する装置で、と説明を始めるのですが、大抵適当に話を切り上げてしまいます。その時チョッと虚しい気分が残るのです。

「オゾン」というと私の中にはとても様々なイメージが膨らんできます。このイメージはオゾンの効用がどうのという話だけではないのです。そこのイメージはとても伝えられないだろう、という感覚が私に却ってオゾンに対する詳しい話をすることを避けさせていたように思います。

勿論私がオゾンについて何もかも知っているわけでなく、実はオゾンのほんの一端を知り始めたに過ぎないと思います。でもそのほんの一端を知ってるだけでもオゾンはとても面白いのです。 

私はかって「トリチウム」と言う物質について研究したことがあります。自分としては相当突っ込んで研究したつもりです。これも大変面白い物質です。一言で言うと「非常に有用でかつ危険でかつ個性的」です。トリチウムが有用であるのはそれがエネルギー源として最大の可能性を秘めているということ、危険であるのはそれが放射性物質であること、個性的であるのは忍者のように種々の物質を透過し、また様々の物質中にもぐりこむことなどです。

「オゾン」はこの面白いトリチウムより更にずっと面白いものです。「非常に有用でかつ危険でかつ個性的」です。

非常に有用であるのは殺菌、脱臭、漂白、医療効果、物質合成などの作用を有しながら環境残留性がないこと、危険であるのは人間や家畜の呼吸器官や目にダメージを与えたり爆発する可能性があること、個性的であるのはほとんどの物質と反応し様々な化合物をつくることその他(※)です。

これからそのオゾンの面白さの一端を随時語って行きたいと思ってます。

補遺(※)

「オゾン」の個性については最近非常に興味を引かれていることがひとつあります。それは「オゾンが生命体の活動の活発化への信号物質として働いている」ように見えることです。

生命体の個体内の信号物質というのはホルモンがあり、個体間の信号物質としてはフェロモン(生命体が放出する匂い)があります。オゾンは天然のフェロモンのような作用を持つのではないかと思うのです。

このように考えたのは「真珠貝の放卵」にオゾンが使われている」ことを知ったのがきっかけです。これは愛媛県の真珠貝養殖業を営んでいる西尾さんから聞いたことです。真珠貝が卵を抱いていると真珠の養殖で障害になるために卵を産卵させるように促す必要があります。 養殖用の水中の水温を上げると共にオゾンを水中に溶かすとその産卵が促進できると言うことです。この現象を私は次のように解釈してみました。

「春になると上空において徐々に紫外線強度が高まり、それにより海水面のオゾン濃度及び海水中のオゾン濃度が高まる。一方真珠貝は産卵に適した時期の到来を認識して産卵する必要があるが、水温の上昇のみでその時期を判断するのはリスキーであり、オゾン濃度の上昇と水温の上昇が伴ったときが時期の到来と判断している。」

実際上空のオゾン濃度は季節と共に変動し、日本では3~5月にピークが来るようです。

紹介するリンクは、日本各地におけるオゾン層の年間変動のデータのある環境省サイトです。「環境省 わが国におけるオゾン層の状況」(PDF,別窓)

オゾンが生命体への信号物質として働いていると推定させるもうひとつのことはオゾンの医療効果です。オゾン療法といわれオゾンを人間の血液中に注入すると免疫力が強化されるなどの生命活動の活性化をもたらします。

私はこのようにオゾンが生命体への信号物質として働くのは生命の永い進化の過程の中におけるオゾンとの関わりの中でDNAに織り込まれた特質でないかと考えてます。

単純に言うと「オゾン濃度の増大(=春の到来)⇒生命活動の活発化」という連鎖が生命体のなかで働くような仕組みがDNAに組み込まれている」のでないかいうことです。

オゾンが生命の歴史の中でそんなに意味を持っていたのか疑問に思われる方もいると思います。この点についてはこのオゾン物語の中でもう少し詳しく話します。