オゾン物語 宇宙のオゾン

宇宙のオゾン

これからオゾンの物語を始めます。

先ずの始まりは心を広大にして、宇宙全体を考えて下さい。

これはアンドロメダ大星雲(星の集まり、銀河)です。

宇宙はこのような星雲が無数に点在して構成されています。

そのような宇宙のどこにオゾンはあるのか考えて見ましょう。

アンドロメダ大星雲

宇宙のどこにオゾンがあるかを知るために、先ずオゾンがどんなものかを見てみましょう。

これがオゾンの模型です。

オゾン分子

そうです。オゾンは酸素原子がこのように3つ結びついて出来るのです。

オゾン分子

ですからオゾンがどこにあるかを捜すには先ず酸素原子のあるところを捜せばよいわけです。これは宇宙における元素の分布を表したものです。この中で緑色の棒が宇宙における酸素の比率を表してます。(国立天文台編 理化年表によるものです)

宇宙での元素存在比(グラフ)

面白いことに酸素は水素とヘリウムについで3番目に多い元素です。

上の図は対数グラフですので、実際の比率から言うと最も多い水素に比べれば、1000分の1程度ですが、窒素に比べれば8倍、鉄にくらべれば26倍もあります。

何故酸素がこんなに多いのか私には分かりませんが、何でも、酸素が生まれている星もあるということです。この写真はNASAによる小マゼラン銀河の超新星SNR0103-72.6の写真です。

この星からのX線のデータより大量の酸素とネオンの発生が確認されているということです。

小マゼラン銀河の超新星SNR0103-72.6

太陽からは太陽風というプラスイオン(原子から電子が剥ぎ取られたもの)と電子が混合した粒子の集まりが放出されています(いるようです)。

次の太陽風のイメージ写真は京都大学 町田忍教授のホームページからです。

太陽風のイメージ

その説明を抜粋させていただくと「太陽風中のイオンの主成分はH+(プロトン)です。次に多いのが He++(アルファー粒子)で、そのプロトンに対する密度比は、およそ0.05です。他に、He+,O6+,C3+等のイオンの存在することが科学衛星による直接探査によって確かめられています」ということです。

ここでO6+というのは酸素の6価イオン(電子が6個はぎとられた酸素原子)です。

次はこのような太陽風の中の微粒子の流れる状態をイメージしたものです。eは電子をpはプロトン(水素のプラスイオン)を意味してます。

太陽風の中を微粒子が流れる状態のイメージ

太陽以外に宇宙に無数に散らばる恒星からも酸素は放出されているはずです。

このようなことから考えると酸素は宇宙のどこにでも普通にあるようです。

そうだとすると酸素から出来るオゾンもどこにでもあるのでしょうか。

それについて調べてみます。

先ず宇宙の物質の状態を考えると、恒星、星間物質及び惑星です。

恒星というのは核融合反応によって燃えている星で、その中はプラズマという状態で、非常に高温で、プラスイオンと電子が混在した状態となってます。ここでプラスイオンというのは原子から電子が剥ぎ取られてプラスの電気を持った原子のことです。このようなプラスイオンはお互いに反発しあっているために互いに安定して結びついていることが出来ません。そのため恒星のなかではオゾンも出来ないと考えられます。

次に星間物質の中にオゾンがあるでしょうか。

星間物質というのは星の間にある物質で主に水素のプラスイオン(プロトンとも言います)です。以前はそこには複雑な化合物が存在しないと考えてましたが、最近電波望遠鏡による観測でいろいろな化合物が含まれることがわかってきてます。

特に星間物質は塊状に集まっていることが知られてきており、その塊を星間雲と言ってます。

次は電波望遠鏡で観た星間雲の例です。

電波望遠鏡で観た星間雲の例

上の写真はマサチューセッツ大学のWilliam M.Irvine教授による論文のなかのものです。

この論文には星間雲に発見された化合物のリストもあります。このリストには水や一酸化炭素のような単純なものからアルコールやベンゼンのような複雑なものまで含まれていますがオゾンは含まれてません。酸素は他の物質と結びつきやすい性質を持ってますが、星間雲のなかでもそのようです。(但し、このような星間雲の中にもオゾンはあり、わずかしか存在しないために観測されてないのかも知れません)

さて惑星にはオゾンがあるのでしょうか。惑星の地中と大気中に分けて考えて見ます。惑星の地中にはたくさんの酸素があります。でもそれらの酸素は他の物質と離れがたく結びついていて、オゾンを作ることはありません。たとえば私達が石とか宝石とか土とか砂とか、鉱石とか呼んでいるものはほとんど酸素が他の元素と結びついて出来たものです。特に酸素が水素と結びついたのが水です。

水分子

水となっている酸素も、水素と分かちがたく結びついているのでオゾンをつくるもとにはなりません。(人工的には水からオゾンを作る電気分解法という方法があります)

それならオゾンは惑星の大気にあるのでしょうか。

次は太陽系の惑星の大気の元素組成を示します。(理化年表による)

緑色の部分が酸素の比率を示してます。

惑星の大気組成

これで見ますと酸素(分子)が多いのは地球だけです。

木星、土星、天王星、海王星の大気のほとんどは水素とヘリウムです。火星と金星の大気中の酸素は大部分が炭酸ガスの状態で、酸素(分子)として存在するのはわずかです。

地球だけに酸素が豊富なのは言うまでも無く、地球の植物により常に酸素(分子)が作られているからです。

地球にはオゾンの原料となる酸素(分子)が豊富に存在します。

それではオゾンは存在するのでしょうか。

実は酸素分子が存在するだけでオゾンが出来るわけではありません。

次に示すようにオゾンは酸素分子と酸素原子が結びついて出来ます。

オゾン分子

ですからオゾンが出来るためには酸素分子と酸素原子の両方が必要です。

ところで地球の上空には酸素原子が沢山あります。

次のグラフは地球の上空での大気の組成です。(理化年表による)

地球上空の大気組成

このように上空で酸素原子が多いのは上空の強い紫外線を受けて酸素分子が原子に分解するからです。

以上のことから地球にオゾンがある理由がご理解いただけたでしょうか。

さて、金星や火星にもわずかな酸素があります。またこれらの星には太陽からの紫外線もあるので、オゾンは出来るはずです。

理化年表には金星のオゾンの量は記録されてません。一方火星には1億分の3のオゾンがあると記載されてます。これは小さいようですが地球の地上におけるオゾンの濃度と同じ程度です。

火星の酸素は0.13%ですから地球の酸素21%に比べて160分の1ですから、オゾンの濃度が同じ程度というのはおかしい気がします。実際は地球のオゾンは大部分がオゾン層と呼ばれる上空で出来、上空のオゾン濃度は10万分の1程度ですからやはり、火星に比べて地球のオゾンはかなり多いということが出来ます。

以上、宇宙全体の中でオゾンがどこにあるかをたずねて来ましたが、結局地球に戻ってきました。

そうです。現在知られている限りにおいてオゾンが最も豊富にあるのはわれわれの星、地球で、それ以外宇宙のどこを捜してみてもオゾンは稀なのです。