オゾン物語 オゾン層の話……オゾン濃度の年変動

オゾン層の話……オゾン濃度の年変動

オゾン層のオゾン濃度は季節によってかなり変動します。

気象庁のオゾン層観測情報(リンク先消滅)には国内4地点(札幌、つくば、鹿児島、那覇)と昭和基地のオゾン全量のデータが示されてます。ここでオゾン全量というのは仮に上空にあるオゾンを全て地上に集めた時のオゾンの厚みでm/atm-cm(ミリアトムセンチメートル)という単位で表してます。1m/atm-cmというのはオゾンの厚みが1気圧で 1/1000cmすなわち1/100mmということです。

国内4地点のオゾン全量は200~450matm-cmの範囲です。

これはオゾンの厚みとして2~4.5mmということになります。

(これはいかにも薄い感じがしますが、この厚みで有害な紫外線はほとんど遮られます。紫外線の話は後述の予定です)

さて、オゾン層観測情報よりオゾン全量の年変動を見ますと、ピークの月とピーク高さは大体ですが札幌で2月、430m/atm-cm、つくばで3月、340m/atm-cm、鹿児島で5月、310m/atm-cm、那覇で5月(280m/atm-cm)です。

ピークの時期は2月から5月ですが南の方ほど遅くなってます。

またピークの高さは北の方ほど高くなってます。

紫外線によるオゾンの発生量は紫外線の強度が大きくなるほど大きくなります。

それから推定するとオゾン全量は紫外線の強い南の方が高くて良さそうです。

しかし実際のオゾン層全量は北の札幌で一番大きく、南の那覇で一番小さいのです。

また、紫外線の強度は夏至の時に一番高くなるのでこの頃にオゾン全量のピークがあっても良さそうですが、実際はそれより早い時期にピークが来てます。

これはかなり不思議に思えます。

このようになる理由としてオゾンの次の性質が関係しているようです。

  • オゾンは紫外線によって生成するがまた、紫外線によって消滅もする。
  • オゾンは自己分解するが、その分解速度は温度が高い程大きい。
  • オゾンは気体中の触媒的な不純物(たとえばフロン)などによって分解が促進される。

つまり、紫外線の強いほどオゾンは発生しますが、一方紫外線により消滅もし、また温度の高さや触媒的不純物濃度に応じた速度で自己分解もするので、紫外線の強い地域や時期にオゾン濃度が高くなるとは限らないということです。

ただ、オゾン全量の地球的な分布を見ますと、かなり複雑に入り組んでいて上記の理由だけでは説明がつきません。どうも地球全体での対流圏と成層圏を含めたグローバルな大気の動きが影響しているようです。この辺りの解明は次のような研究テーマにて九州大学の廣岡教授等により開始されていますが、解明はこれからと思われます。

廣岡 俊彦 成層圏オゾンと大気循環の変動に関する研究