ゴムのオゾン劣化を実験で検証|亀裂(オゾンクラック)と耐オゾン性

はじめに

ゴムは大気中のオゾンによって少しずつ劣化し、ひび割れ(亀裂)が生じることがあります。この現象は、一般的にオゾン劣化やオゾンクラックと呼ばれます。この記事では、材質の異なる円盤型のゴム試験片をオゾンに曝露し、劣化の進み方が材質によってどう違うかを調べた典型的なオゾン曝露試験事例を、方法から結果・考察までわかりやすく紹介します。

 

記事のポイント

  1. 円盤型のゴム試験片をオゾンに曝露し、材質ごとの劣化(ひび割れ)の進み方を比較した

  2. 高い濃度のオゾンに短時間さらすことで、屋外で長期間使った状態を短期間で再現できる

  3. 同じNBRでも、ひび割れが出るものとほとんど変化しないものがあった

  4. NBR製の一部とEPDM製の試験片は、換算で約11年相当まで曝露してもほとんど変化が見られなかった

  5. 耐オゾン性は材質や配合で大きく変わるため、実際に使う材質での曝露試験がおすすめ

実験の背景 ゴムのオゾン劣化(オゾンクラック)とは

ゴム表面に生じた亀裂(クラック)
ゴムのオゾン劣化により発生したオゾンクラック

ゴムは、空気中にわずかに含まれるオゾンによって、時間をかけて表面がひび割れていくことが知られています。屋外で使われるゴム製品では、この「オゾン劣化」が寿命を左右することもあります。

しかし、自然環境でのオゾン劣化はとてもゆっくり進むため、実際に何年も待って確認するのは現実的ではありません。

そこで、通常より高い濃度のオゾンに短時間さらすことで、長期間の劣化を短期間で再現する「オゾン曝露試験(オゾン劣化試験)」が行われます。今回は、材質の異なる円盤型のゴム試験片を用意し、オゾンに対する強さ(耐オゾン性)が材質によってどう違うかを確認しました。

 

実験方法 オゾン曝露試験の進め方/手順

ここでは、今回のオゾン曝露試験をどのような装置・手順で行ったかを説明します。使用した装置、試験のしくみ、試験手順の順にご紹介します。

使用装置

装置 型式・仕様 メーカー
オゾン発生器 ED-OG-R6
オゾン発生量:約4g/h(最大)
エコデザイン株式会社
オゾン濃度計
(一次試験用)
PG-620-MA-G
紫外線吸収式(低濃度測定用)
測定範囲:0〜1,400ppm
荏原実業株式会社
オゾン濃度計
(二次試験用)
PG-620-MA-H
紫外線吸収式(高濃度測定用)
測定範囲:0〜300g/m3(N)
荏原実業株式会社
オゾン分解器 オゾン分解触媒入りSUS304容器 エコデザイン株式会社
曝露試験容器 直方体型アクリル容器
容積約10L(内寸320×320×100mm)
恒温槽 アクリル窓・ステンレス(SUS304)枠容器
容積約300L(670×670×670mm)
バルブ類 材質:SUS304 スウェージロック社
配管・コネクター類 フッ素樹脂(PFA・PTFE、1/4インチ)
原料ガス 一次試験:大気
二次試験:酸素一般工業用グレード

 

試験系統図

試験装置の全体を映した写真
試験装置全景
試験系統図
試験系統図

 

試験手順

円盤型のゴム試験片を曝露試験容器に設置し、オゾン発生器から一定濃度のオゾンを供給して曝露します。まずは低めの濃度で長めに、続いて高い濃度で短時間、というように段階的に曝露し、その間ずっと試験片の外観の変化を観察・記録します。曝露試験容器から出たオゾンは分解器で酸素に分解してから排気します。所定の曝露が終わったらオゾン供給を止めて試験を終了します。

試験中の円型試験片
試験中の円盤型試験片
試験手順
  • 準備
    STEP 1. 試験片を曝露試験容器にセットする
     

    材質の異なる円盤型のゴム試験片(直径約20cm・厚さ数mmのゴム板を金属製の台に貼り付けたもの)を、アクリル製の曝露試験容器の中に立てかけて設置します。

     

  • 準備
    STEP 2. 装置を準備し、オゾン濃度計を設定する
     

    曝露試験容器を恒温槽の中に入れ、オゾン濃度計を取り付けます。まずは低い濃度を測るための濃度計を用意し、あらかじめ暖機運転をしておきます。

     

  • 準備
    STEP 3. 漏洩がないか確認する
     

    事故防止のため、オゾンを流す前に、配管や曝露試験容器からのガス漏れがないかを最終確認します。

     

  • 試験
    STEP 4. 第一段階(低濃度・長時間)の曝露を行う
     

    オゾン発生器を低めの濃度(目標およそ1000ppm)に調整し、曝露試験容器へ供給します。出口側のオゾン濃度をほぼ常時、入口側を時々確認しながら、所定の時間(今回は約150分)曝露します。

     

  • 試験
    STEP 5. 試験片の外観変化を観察・記録する
     

    曝露している間は、試験片の外観の変化(ひび割れの有無や進み具合など)を、目視と写真撮影で時間を追って記録します。

     

  • 試験
    STEP 6. 第二段階(高濃度・短時間)の曝露を行う
     

    低濃度の曝露が終わったら一度オゾンを止めて容器内のオゾンガスを十分に排出します。次に、濃度計を高濃度用に取り替えて、オゾン発生器を高い濃度(低濃度の十数倍)に調整して供給し、短時間(今回は約30分)曝露します。曝露試験容器から出たオゾンは、分解器で酸素に分解してから排気します。

     

  • 終了
    STEP 7. オゾン供給を止め、容器内をパージする
     

    所定の曝露が終わったら、オゾン発生器を停止します。その後しばらくガスを流し続けて容器内のオゾンを追い出し、濃度計でオゾンが十分に下がったことを確認します。

     

  • 終了
    STEP 8. 試験片を取り出し、曝露量を年数に換算する
     

    試験片を注意深く取り出し、外観を写真撮影します。あわせて、曝露中のオゾン濃度と時間から「オゾン濃度×時間(濃度時間積)」を求め、これを大気中のオゾン(0.1ppmを基準)に換算した「相当年数」として整理します。

     

 

実験結果 NBR・EPDMの耐オゾン性の違い

試験結果の写真
試験結果

曝露中から曝露後にかけて、試験片ごとに外観の変化を観察しました。同じゴムの種類でも、材質や配合によって劣化の進み方に大きな差が見られました。

あるNBR製の円盤型試験片(試験片A)は、換算で約11年相当まで曝露しても、ひび割れなどの明らかな変化は認められませんでした。

一方、別のNBR製の円盤型試験片(試験片B)では、穴を中心に放射状・蜘蛛の巣状に広がるひび割れ(亀裂)がはっきりと確認されました。

EPDM製の円盤型試験片(試験片C)は、目立ったひび割れは見られませんでした。

また、薄手の角型試験片の一部では、換算で数年相当という比較的早い段階で亀裂が発生し、さらに進行して一部が脱落(欠け落ち)するものもありました。ひび割れは、穴の内側や端面など、力がかかりやすい部分を起点に発生・進行する傾向が見られました。

 

考察 耐オゾン性が材質で変わる理由

NBRゴム表面に生じたオゾンクラック
NBRゴム表面に生じたオゾンクラック

今回の試験から、ゴムの耐オゾン性(オゾンに対する強さ)は、ゴムの種類だけでなく、材質や配合によって大きく変わることが分かりました。

同じNBRでも、ほとんど変化しないものと、はっきりとひび割れが出るものがありました。これは、オゾン劣化を抑える成分(添加剤)の有無や配合の違いなどが影響していると考えられます。

また、ひび割れは穴や端面など、力(応力)がかかりやすい部分を起点に発生・進行する傾向が見られました。オゾンによるひび割れは、ゴムが伸ばされている部分で起きやすいことが知られており、今回の観察とも一致します。

このように、促進的なオゾン曝露試験を行うことで、屋外で長期間使ったときの劣化の進み方を短期間で見積もり、材質選びの参考にすることができます。

 

よくあるご質問

Q
オゾンクラックとは何ですか?
A

オゾンクラックとは、オゾンによってゴム表面に発生する細かなひび割れのことです。特に、ゴムが伸ばされている部分や、穴・端面など応力が集中しやすい部分で発生しやすい傾向があります。ゴムのオゾン劣化が進むと、ひび割れが広がり、部品の強度低下や破損につながる場合があります。

Q
オゾンでゴムが劣化するのはなぜですか?
A

オゾンは反応性の高いガスで、ゴムの分子を切る働きがあります。特にゴムが伸ばされている部分では、表面に細かいひび割れ(亀裂)が生じやすくなります。これが進むと、ひび割れが広がってゴムの強度が下がっていきます。

Q
なぜ高い濃度のオゾンを使うのですか?
A

自然環境のオゾン濃度はとても低いため、実際の劣化はゆっくり進みます。そこで、あえて高い濃度のオゾンに短時間さらすことで、長期間の劣化を短期間で再現します。曝露したオゾンの「濃度×時間」を計算すれば、おおよそ何年相当の曝露かを見積もることができます。

Q
耐オゾン性の試験規格「JIS K 6259-1」とは何ですか?
A

ゴムの耐オゾン性を評価する方法を定めるのが、JIS K 6259-1:2015(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐オゾン性の求め方-第1部:静的オゾン劣化試験及び動的オゾン劣化試験)です。一般的には、規定した濃度のオゾン雰囲気に、伸ばした状態などの試験片をさらし、一定時間後の亀裂の有無や程度で耐オゾン性を判定します。

なお今回の試験は、この規格に準拠したものではなく、より短時間で全体的な傾向をつかむために高い濃度で曝露する促進的な方法で行っています。そのため得られる「相当年数」はあくまで目安であり、規格に基づく正式な評価とは位置づけが異なります。規格に沿った試験や、実際の使用条件に合わせた評価をご希望の場合は、お気軽にご相談ください。

Q
「0.1ppm換算で何年」とは、どういう意味ですか?
A

大気中に基準として0.1ppmのオゾンがあると仮定し、そのオゾンに何年さらされた場合と同じ量か、という目安です。試験中のオゾン濃度を時間で積み上げた値を、この基準で割って求めます。あくまで換算上の目安で、実際の使用環境のオゾン濃度によって相当年数は変わります。

Q
どのゴムを選べば、オゾンに強いですか?
A

一般に、EPDMなどはオゾンに強いゴムとして知られています。一方で、同じ種類のゴムでも、材質や配合(添加剤など)によって強さは大きく変わります。今回の試験でも、同じNBRで、ほとんど変化しないものとひび割れが出るものがありました。最終的には、実際に使う材質で曝露試験を行って確認するのが確実です。

Q
自分が使っているゴム部品でも試験できますか?
A

可能です。材質の異なる試験片を並べて同じ条件で曝露すれば、耐オゾン性を比較できます。屋外や酸化しやすい環境で使うゴム部品の寿命の見積もりや、材質選びの参考にしたい場合は、お気軽にご相談ください。

受託試験
Q
ゴムのオゾン劣化試験は委託できますか?
A

可能です。実際に使用するゴム部品や試験片を用いて、一定濃度のオゾンに曝露し、ひび割れや外観変化を確認できます。材質ごとの耐オゾン性比較や、屋外使用時の劣化リスク確認にも活用できます。

 

まとめ

今回は、材質の異なる円盤型のゴム試験片をオゾンに曝露し、劣化(ひび割れ)の進み方を比較する典型的な試験事例を紹介しました。

高い濃度のオゾンに短時間さらして「何年相当」に換算することで、屋外での長期間の劣化を短期間で見積もることができます。

試験の結果、耐オゾン性はゴムの種類だけでなく、材質や配合によって大きく変わることが確認できました。同じNBRでも、ほとんど変化しないものと、はっきりひび割れが出るものがありました。

オゾンによる劣化が心配なゴム部品や、材質選びでお困りの場合は、まずは実際に使う材質で小規模なオゾン曝露試験を行い、劣化の進み方を確認することをおすすめします。

 

オゾン曝露試験の受託について

「オゾン水で配管を洗浄したら汚れは落ちるのか?」「オゾンガスを使って素材の耐久性を検証したい」「薬液や排水の分解効果を実験してみたい」そんな現場の声に応えて、エコデザインでは目的に合わせた多様な試験の受託実施サービスを提供しています。



装置の構成や条件はすべてカスタマイズ可能。試験設計から実施・レポート提出までワンストップで対応。JIS規格外の環境や、他社では難しい特殊なプロセスにも柔軟に対応します。

簡易なお試し試験は、条件により無料での対応も可能です。まずはお気軽に、検証したい内容をご相談ください。

受託試験

 

オゾンの取り扱い上の注意
  • オゾンは高濃度で人体に有害となるおそれがあります。必ず換気を確保し、適切な安全対策の上で使用してください。
  • 用途・環境により必要な対策は異なります。設置・運用に不安がある場合は専門家に相談してください。

オゾンのことなら「オゾンなんでも相談窓口」

オゾンの使い方や、機種選びで迷ったときは、専門スタッフに相談できる「オゾンなんでも相談窓口」をご活用ください。用途や設置環境に合わせて、基礎的な疑問から具体的な運用方法までわかりやすくご案内します。

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