オゾンの活用分野10選|半導体・水処理から脱臭まで【事例付き】

はじめに

オゾンは酸素から生まれる物質でありながら、酸素よりもはるかに強い酸化作用を持つ気体です。この力で菌やニオイのもと、色のもとになる物質を分解できるため、殺菌・脱臭・脱色をまとめてこなせるのが大きな特長です。しかも、役目を終えると酸素に戻る性質があるため、薬品と異なり使ったあとの成分が残りにくい点も注目されています。

オゾンの基本的な性質

この記事では、食品から半導体、養殖まで、オゾンが実際に使われている代表的な分野を、「どんな目的で・どのように使われているのか」がイメージできるよう、わかりやすく紹介します。

 

記事のポイント

  1. 食品の殺菌や排水処理に、オゾンの酸化力が役立つ

  2. 半導体の精密洗浄や材料の表面処理など、ものづくりの現場でも活用が進む

  3. 水族館・陸上養殖の水づくりから、室内や工場・飲食店のニオイ対策まで、オゾンの脱臭・殺菌力が幅広く使われる

  4. 有機物の分解処理や、材料の耐オゾン性を確かめる曝露試験にもオゾンが利用できる

  5. 真珠養殖やオゾン化油など、ユニークな分野にも活用の幅が広がっている

 

①排水処理

下水や工業排水の分野では、オゾンは水の殺菌・脱臭・脱色や、水に溶けた有機物を減らす目的で使われています。

使い方としては、処理槽(接触槽)の中に細かな泡としてオゾンを送り込み、水と十分に触れさせることで反応させるのが一般的です。これにより、塩素では分解しにくい色素や、メルカプタンのような悪臭成分、生物処理だけでは落としきれない難分解性の有機物を酸化・分解できます。

さらに、マイクロバブルと組み合わせて分解力を高める使い方や、塩素と異なり成分が残りにくい点を活かした仕上げ処理としての使い方もあります。きれいにした水を再びトイレ用水などに使う中水処理にも活用され、放流先の環境への負担を減らすことに役立っています。

オゾン排水処理システムの構成図(後付けシステムのイメージ)
図:排水処理設備へのオゾン投入イメージ(代表的な構成例)

 

排水処理の導入事例(リンク)

 

②半導体の精密洗浄

半導体の製造現場では、オゾンを水に溶かした「オゾン水」が精密洗浄に使われています。具体的には、シリコンウェハーの表面にオゾン水を吹き付けたり、オゾン水に浸したりして、表面に付いた油分やレジスト(感光性樹脂)などの有機物を酸化分解して取り除きます。

従来は硫酸と過酸化水素を混ぜた薬液(SPM)などが使われてきましたが、その一部をオゾン水に置き換えることで、薬品の使用量や廃液を減らせる点が注目されています。

金属を含まないタイプ(メタルフリー)の装置でつくったオゾン水なら、わずかな金属汚れも嫌う半導体やシリコンウェハーの洗浄に向いています。洗浄と同時に表面へ薄く均一な酸化膜をつくる用途にも使われ、純水(DIW)にオゾンを溶かすだけで使える手軽さから、薬品の代わりとして幅広い工程で利用が広がっています。

 

半導体の精密洗浄の導入事例(リンク)

 

③材料の表面処理

オゾンは、材料の表面を整える表面処理にも使われます。たとえば、樹脂やフィルムの表面にオゾンを作用させると、表面の濡れ性が向上して水や接着剤になじみやすくなり、塗装や接着がしっかり決まるようになります(表面の改質)。塗る・貼るといった工程の前処理として役立つ使い方です。

半導体・電子材料の分野では、CVD(化学気相成長)やALD(原子層堆積)による薄膜形成の前段階として、オゾンで基板表面に酸化膜を形成する「ウェハ酸化処理」にも利用されています。表面をあらかじめ酸化・清浄化しておくことで、その後に成膜する薄膜との密着性や均一性を高める目的で使われます。

また、金属の表面に薄い酸化膜をつくってサビを防いだり、表面の性質を安定させたりといった用途もあります。薬品を使う方法に比べて扱いがシンプルなことから、ものづくりの分野で幅広く役立っています。

 

材料の表面処理の導入事例(リンク)

 

④水族館・陸上養殖の水づくり

水族館や、動物園、陸上養殖場などで使う水にも、オゾンが使われています。使い方としては、ろ過装置を通したあとの循環水にオゾンを溶かし込み、水を殺菌して魚や生き物を病気から守ります。

あわせて、水の黄ばみや濁りのもとになる溶けた有機物を分解し、透明感のある美しい水を保つ働きもあります。海水の場合は泡で汚れを除く装置(プロテインスキマー)と組み合わせて使われることも多くあります。

ただし、オゾンが残ったままの水は魚にとって有害な場合があるため、必要に応じて活性炭や脱気などで残留オゾンをしっかり除いてから水槽へ戻すのがポイントです。閉鎖循環式の陸上養殖では、水がきれいに保てることで使う水の量を抑えられるうえ、臭気成分の分解によって、養殖魚特有の臭みが減るといった効果も報告されています。

 

水族館・陸上養殖の導入事例(リンク)

 

⑤空間脱臭

室内の空気をきれいにする用途でも、オゾンは活躍します。空気中の菌を抑え、気になるニオイを分解するため、ホテルの客室や物流倉庫など、清潔さと快適さが求められる空間で使われています。使い方は大きく2通りあり、人がいる空間では低い濃度で常時運転する方法、人がいない時間帯には高めの濃度で短時間しっかり処理する方法(無人での集中脱臭)が選ばれます。

たとえばホテルでは、客室の入れ替わりのタイミングでオゾンを使い、タバコや生活臭などの染み付いたニオイを分解してから次のお客様を迎える、といった運用が行われています。オゾンは脱臭剤と異なりニオイを別の香りで隠すのではなく、ニオイ成分そのものを分解する点が特長です。

 

空間脱臭の導入事例(リンク)

 

⑥工場・飲食店の排気対策

また、工場や飲食店などから出る排気のニオイ対策にもオゾンは有効です。廃棄物処理や調理などで発生する強いニオイを分解し、周囲への影響をやわらげる目的で利用されています。使い方としては、排気を通すダクトや脱臭塔の中にオゾンを送り込み、ニオイ成分とその場で反応・分解させる方法が一般的です。

水で洗うタイプの脱臭装置(スクラバー)などと組み合わせれば、強いニオイにも効率よく対応できます。近隣に住宅が近い飲食店や食品工場などでは、煙突や換気の出口に近い場所に設置し、ニオイが外へ広がる前に処理する使い方が向いています。

産業廃棄物処理場に設置されたスクラバー

 

工場・飲食店の排気対策の導入事例(リンク)

 

⑦食品の殺菌

オゾンには強い殺菌力があるため、食品を洗浄・殺菌する用途に使われています。具体的には、オゾンを溶かしたオゾン水で野菜やカット食材を洗ったり、調理器具やまな板、製造ラインの設備を殺菌したりといった使い方があります。塩素のように成分が残りにくく、すすぎの手間が少なくて済む点もメリットです。

特にミネラルウォーターなどの殺菌では、オゾンによる殺菌が公的な規格の基準として定められており、主要な殺菌手段として広く利用されています。殺菌の効き目は「オゾン水の濃度」と「接触時間」の掛け合わせ(CT値)で管理され、これにより安定した殺菌効果が得られます。

※参照:厚生労働省 清涼飲料水(ミネラルウォーター類)製造における「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書 https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000535165.pdf

 

食品の殺菌の導入事例(リンク)

 

⑧有機物の分解処理

オゾンには有機物を分解する力があり、その性質を利用した処理も行われています。有機化学の世界でよく知られているのが「オゾン分解」と呼ばれる反応です。目的の化合物をつくる合成手段として使われるほか、「分子のどこに二重結合があるか」を調べる構造解析の手がかりとしても利用され、研究や実験の現場で重宝されています。

こうした「狙った結合を切る」性質は、工業的な前処理にも応用されています。たとえば、木材からバイオエタノールを取り出すための前処理(リグニンの除去)では、木材の中で糖の取り出しを邪魔しているリグニンをオゾンで分解し、その後の工程を進めやすくする目的で使われます。

 

有機物の分解処理の導入事例(リンク)

 

⑨材料耐性試験(曝露試験)

材料がオゾンにどれだけ耐えられるかを調べる曝露試験(耐オゾン試験)にも利用されます。大気中(特に屋外)には微量のオゾンが存在し、例えばタイヤのゴムなどの酸化に弱い素材をゆっくりと劣化させています。オゾンによって素材が劣化すると、ひび割れ(クラック)が生じることがあり、素材の破損につながります。

そこで、あえて大気中よりもはるかに高い濃度のオゾン(例えば大気中の100倍の濃度のオゾン)にさらすことで、屋外などで使ったときの劣化や変色のしやすさを評価でき、製品の品質や寿命を確かめる研究・開発の場面で役立っています。

このような試験の実施には、曝露試験装置などの専用の試験設備と、一定濃度のオゾンを安定的に供給する専用のシステムが必要となります。一通りの設備を整えるには相応のスペースとコストを要するため、実験設備を整えるには高いハードルがあるのが実情です。

もし、設備を整えることが難しい時は、試験可能な機関に試験を依頼するのも一つの手段となります。エコデザイン株式会社では、目的に合わせた多様な試験の受託実施サービスを提供しています。もし、試してみたい試験があれば是非ともご検討ください。

 

材料耐性試験(曝露試験)の導入事例(リンク)

 

⑩その他のユニークな分野

少しユニークな分野でもオゾンは活躍しています。真珠の養殖では、貝が卵を産むタイミング(放卵期)を調整するために、水の状態をオゾンで整えて産卵を促す、といった使われ方があります。生産の計画を立てやすくするための工夫のひとつです。

このほか、オイルにオゾンを取り込ませた「オゾン化油」がつくられるなど、オゾンの酸化力を素材づくりに応用する例もあります。こうした分野は今も研究や実用化が進んでおり、活用の幅は広がり続けています。

 

その他のユニークな分野の導入事例(リンク)

 

ここで紹介した以外にも、オゾンはさまざまな分野で利用されています。用途や環境によって適したオゾン濃度や使い方は異なるため、導入を検討する際はメーカーや専門家に相談すると安心です。

よくあるご質問

Q
オゾンはどうしてさまざまな分野で使われているのですか?
A

オゾンには強力な酸化作用があり、菌やニオイのもと、色のもとになる物質を分解できるためです。殺菌・脱臭・脱色などをまとめてこなせるため、食品から工業まで幅広い分野で利用されています。

Q
オゾンは気体と水のどちらで使うのですか?
A

用途によって使い分けます。空間の脱臭や殺菌にはオゾンを含んだ気体(オゾンガス)を、洗浄や水処理にはオゾンを水に溶かしたオゾン水を使うのが一般的です。

Q
自分の使いたい用途にオゾンが向いているか知るには?
A

まずは「何を・どのくらいの範囲で・どんな目的で処理したいか」を整理するのがおすすめです。そのうえでメーカーや販売店に相談すると、用途に適した機種や使い方を提案してもらえます。

まとめ

オゾンは強い酸化作用を活かして、食品の殺菌から水処理、空気の脱臭、半導体の精密洗浄、さらには真珠養殖まで、非常に幅広い分野で利用されています。殺菌・脱臭・脱色などを薬品に頼らず行える点が大きな魅力です。ご自身の用途に合うかどうか気になる場合は、まずはメーカーや専門家に相談してみることをおすすめします。

オゾンの取り扱い上の注意
  • オゾンは高濃度で人体に有害となるおそれがあります。必ず換気を確保し、適切な安全対策の上で使用してください。
  • 用途・環境により必要な対策は異なります。設置・運用に不安がある場合は専門家に相談してください。

オゾンのことなら「オゾンなんでも相談窓口」

オゾンの使い方や、機種選びで迷ったときは、専門スタッフに相談できる「オゾンなんでも相談窓口」をご活用ください。用途や設置環境に合わせて、基礎的な疑問から具体的な運用方法までわかりやすくご案内します。

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