
はじめに
オゾンには色やニオイを取り除く働きがあります。この記事では、レギュラーコーヒーにオゾンを吹き込み、色とpH(酸性・アルカリ性の度合い)がどう変わるかを調べた実験を、方法から結果・考察までわかりやすく紹介します。
記事のポイント
-
レギュラーコーヒーにオゾンを吹き込み、色とpHの変化を調べた
-
オゾンをしばらく吹き込むと、コーヒーはかなり脱色された
-
コーヒーのニオイもほとんど感じられなくなった
-
pHは5.08から3.62へ下がり、酸性の液体に変化した
-
味は非常に酸っぱくエグ味が出て、飲める状態ではなくなった
実験の背景
オゾンには、色を薄くする「脱色」や、ニオイを消す「脱臭」の働きがあります。これらの作用を、身近で分かりやすいサンプルで確かめてみようというのが今回の目的です。
コーヒーは色もニオイもはっきりしているため、変化を目で見て確認しやすいサンプルです。そこで、レギュラーコーヒーにオゾンを吹き込み、色・ニオイ・pH(酸性度)がどう変わるかを調べました。
あわせて、吹き込んだオゾンがどのくらい反応して消費されるのかも確認しました。
実験方法
ここでは、今回のコーヒーの脱色実験をどのような装置と手順で行ったかを説明します。使用した装置、試験の系統(つなぎ方)、試験手順の順にご紹介します。
使用装置
| 試験条件 | 内容 |
|---|---|
| 使用オゾン発生器 | 研究開発用オゾン発生器 ED-OG-R4 |
| 試験サンプル | レギュラーコーヒー |
| サンプル量 | 150cc |
| ガス流量 | 0.5L/min |
| オゾン濃度(初期) | 141g/Nm3 |
| オゾン濃度(終了時) | 141g/Nm3 |
| オゾン発生量 | 4.23g/hr |
| 気温 | 25.8℃ |
試験系統

試験手順
コーヒーを入れた容器にオゾン発生器からオゾンを吹き込み、色の変化を一定時間ごとに記録します。色を比べやすいように、同じコーヒーを入れた比較用の容器も並べて用意しました。コーヒーを通り抜けたガスはオゾン濃度計で濃度を測り、そのあとオゾン分解器で酸素に戻してから排気します。処理の前後ではpHも測定します。
- 準備STEP 1. コーヒーと比較用サンプルを用意する
レギュラーコーヒー150ccを試験用の容器に入れます。色の変化を比べやすいように、同じコーヒーをもう一つの容器にも用意し、隣に並べておきます。
- 準備STEP 2. 装置をセッティングする
オゾン発生器、オゾン濃度計、オゾン分解器を順につなぎます。オゾン発生器で作ったオゾンをコーヒーの容器に吹き込み、通り抜けたガスは濃度計で濃度を測ります。最後にオゾン分解器を通し、残ったオゾンを酸素に戻してから大気中に排気する構成です。
- 準備STEP 3. ガスを流して流量を調節する
まずは酸素ガスを流し、流量を目的の値(今回は毎分0.5リットル程度)に調節します。この時点ではまだオゾンは発生させていません。
- 準備STEP 4. 漏洩がないか確認する
事故防止のため、オゾンを発生させる前に、ガスやコーヒーが漏れていないかを最終チェックします。
- 試験STEP 5. 試験開始:オゾンを吹き込む
オゾン発生器の電源を入れ、コーヒーにオゾンを吹き込み始めます。一定時間ごとにコーヒーの色を記録し、比較用のコーヒーと見比べます。
- 試験STEP 6. 排出ガスの濃度を測り、オゾンを分解する
コーヒーに吹き込まれて出てきたガスは、まずオゾン濃度計を通ります。これにより、コーヒーで消費されずに残ったオゾンの濃度が分かります。そのあとオゾン分解器を通し、オゾンを酸素に戻してから安全に排気します。
- 終了STEP 7. 試験終了:pH・ニオイ・味を確認する
目的の時間(今回は約30分)まで吹き込んだら、オゾン発生器を停止します。その後は酸素ガスをしばらく流し続けて系統内のオゾンを追い出してから試験を終了します。処理の前後でpHを測定し、ニオイや味の変化も確認しました。
実験結果
| 0分 | 10分経過 | 15分経過 |
|---|---|---|
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| 20分経過 | 25分経過 | 30分経過 |
![]() |
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| 測定項目 | 結果 |
|---|---|
| オゾン消費量 | 約2,000mg(コーヒー1Lあたりに換算・30分間) |
| pH(吹き込み前) | 5.08 |
| pH(吹き込み後) | 3.62(酸性側に低下) |

| 時間 [min] |
排出濃度 [g/Nm3] |
オゾン排出量 積算 [g] |
オゾン供給量 積算 [g] |
オゾン消費量積算 [mg/L] |
オゾン利用効率 [%] |
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 75 | 0.00 | 0.00 | 0 | 0.0 |
| 1 | 75 | 0.04 | 0.07 | 220 | 42.9 |
| 2 | 104 | 0.08 | 0.14 | 392 | 42.9 |
| 3 | 107 | 0.14 | 0.21 | 510 | 33.3 |
| 4 | 109 | 0.19 | 0.28 | 620 | 32.1 |
| 6 | 113 | 0.30 | 0.42 | 820 | 28.6 |
| 7 | 115 | 0.36 | 0.49 | 910 | 26.5 |
| 8 | 119 | 0.42 | 0.56 | 990 | 25.0 |
| 9 | 120 | 0.48 | 0.63 | 1,062 | 23.8 |
| 10 | 121 | 0.54 | 0.71 | 1,130 | 23.9 |
| 12 | 123 | 0.66 | 0.85 | 1,257 | 22.4 |
| 14 | 125 | 0.78 | 0.99 | 1,370 | 21.2 |
| 15 | 125 | 0.84 | 1.06 | 1,423 | 20.8 |
| 16 | 126 | 0.91 | 1.13 | 1,475 | 19.5 |
| 19 | 128 | 1.10 | 1.34 | 1,615 | 17.9 |
| 20 | 128 | 1.16 | 1.41 | 1,658 | 17.7 |
| 23 | 129 | 1.35 | 1.62 | 1,783 | 16.7 |
| 25 | 130 | 1.48 | 1.76 | 1,860 | 15.9 |
| 30 | 133 | 1.81 | 2.12 | 2,018 | 14.6 |
※ オゾン消費量積算:オゾン供給量から排出量を引き、サンプルの体積で割った値(単位体積あたり)。
※ オゾン利用効率:オゾン供給量から排出量を引き、供給量で割った値。吹き込んだオゾンのうち、どれだけがコーヒーで消費されたかを示します。
オゾンを吹き込み始めてから1分ほどで、コーヒーの色が目に見えて薄くなり始めました。時間の経過とともにさらに薄くなり、約30分後にはかなり脱色され、透明に近い状態になりました。
この30分間で、コーヒー1リットルあたりに換算して約2,000mgのオゾンが消費されました。ただし、その消費のされ方は一定ではありません。実験開始直後は利用効率が高く、供給したオゾンの約43%が消費されていましたが、時間の経過とともに効率は下がり、終了時には約15%まで低下しました。
pHは、オゾンを吹き込む前が5.08、吹き込んだ後が3.62で、酸性側に下がりました。
処理後のコーヒーは、ニオイがほとんど感じられなくなっていました。味はわずかにコーヒーの風味が残っていたものの、非常に酸っぱく、エグ味のようなものが出て、とても飲める状態ではありませんでした。
考察
コーヒー1リットルあたり約2,000mg程度のオゾンを吹き込むと、コーヒーはかなり脱色できることが分かりました。ニオイも大きく減っており、オゾンの脱色・脱臭の働きをはっきり確認できました。
オゾンの利用効率は、実験開始直後は約43%と高く、時間とともに約15%まで低下しました。これは、オゾンと反応しやすい成分が先に消費され、それらが減るにつれて反応が進みにくくなったためと考えられます。
pHが下がったのは、コーヒーに含まれるフェノール類や不飽和脂肪酸がオゾンによって酸化・分解され、カルボン酸などが生成したためと考えられます(オゾン分解、オゾノリシス)。ただし、今回の実験では具体的な要因の解析は行っていません。
一方で、味は酸っぱくエグくなり、飲める状態ではなくなりました。つまり、色やニオイを取り除くことと、飲めるようにすることは別だと言えます。オゾン処理は、あくまで色やニオイを減らすための処理です。
よくあるご質問
- Qコーヒーはどのくらいで脱色されますか?
- A
今回の実験では、オゾンを吹き込み始めてから1分ほどで色が薄くなり始め、約30分でかなり脱色されました。量にすると、コーヒー1リットルあたり約2,000mgのオゾンを消費しています。ただし、必要な時間や量はサンプルの種類や量によって変わります。
- Qなぜコーヒーをオゾンで酸化したらpH(酸性度)が下がったのですか?
- A
オゾンには強い酸化作用があります。「酸化」自体は酸っぱくなることを意味しませんが、今回はコーヒーの成分が酸化された結果、酸性を示す物質(カルボン酸など)が生じたため、pHが下がったと考えられます。実際、今回は5.08から3.62まで下がりました。
※「酸化」は物質が酸素と結びつく反応のこと。酸っぱくなる(酸性になる)とは別の意味ですが、今回はその反応で酸性の物質ができたため結果的にpHが下がりました。
- Q脱色したコーヒーは飲めますか?
- A
飲めません。ニオイはほとんど無くなりましたが、味は非常に酸っぱく、エグ味が出ていました。オゾン処理は色やニオイを取り除くための処理であって、飲めるようにするためのものではありません。
- Q吹き込んだオゾンは、すべて反応して消えるのですか?
- A
いいえ。今回はコーヒーに吹き込む前と後でオゾンガスの濃度に大きな差がありませんでした。これは、反応しやすい成分にだけオゾンが使われ、余ったオゾンはそのまま出てきていることを示しています。出てきたオゾンは、オゾン分解器で酸素に戻してから安全に排気しています。
- Q家庭のコーヒーで同じことを試せますか?
- A
原理的には同じような変化が起こり得ますが、おすすめしません。実験で使う高濃度のオゾンは体に有害で、専用の装置や安全対策が必要です。また、処理後のコーヒーは飲めなくなるため、実用的な目的もありません。オゾンによる脱色・脱臭を検討する場合は、まず専門の設備で小規模な試験を行うことをおすすめします。
まとめ
今回の実験では、レギュラーコーヒーにオゾンを吹き込むことで、色をかなり薄くでき(脱色)、ニオイもほとんど無くせる(脱臭)ことを確認できました。
一方で、pHは5.08から3.62へ下がり、味は非常に酸っぱくエグくなって飲める状態ではなくなりました。これは、コーヒーの成分がオゾンによって酸化されたためと考えられます。脱色・脱臭と、飲めるようにすることは別だと言えます。
また、吹き込む前後でオゾン濃度に大きな差がなかったことから、オゾンは反応しやすい成分にだけ作用している可能性があります。
色やニオイでお困りの液体がございましたら、まずは実際のサンプルを使った小規模試験で、効果と適切な条件を確認することをおすすめします。
- オゾンは高濃度で人体に有害となるおそれがあります。必ず換気を確保し、適切な安全対策の上で使用してください。
- 用途・環境により必要な対策は異なります。設置・運用に不安がある場合は専門家に相談してください。
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